■ 第1回 システム管理への道

本講座で記述するシステム管理について

  コンピュータ及びソフトウェア業界にいる技術者のほとんどは、ソフトウェア開発技術者であり、またその開発の仕事でシステムがわかっていると思っています。ソフトウェアは開発するのが目的ではなく利用・運用していくことが目的であるはずなのに、ソフトウェア開発に携わる技術者はそれを得てして忘れがちです。また、システムを立案・企画する経営サイトに近いマネージャーも、得てして企画内容や仕様にこだわりすぎ、ソフトウェアを利用するエンドユーザの立場や実際にそのシステムを運行する場合のコスト感覚を疎かにすることがあります。

 近年、汎用機からシステム基盤がオープン系のアーキテクチャに変わっていくことによって、この問題は年々大きくなっていくように思えます。また、システムのグローバル化、インターネットビジネスによる不特定多数の利用者を扱うシステムの増加によってシステムを管理するという行為は、いよいよ複雑になってきています。
ここでは、このシステム管理という分野の基本的な知識とトレンドをやさしく説明していきます。
まず経営からみたシステム管理について重要と思われる項目をピックアップしてみましょう。


経営からみるシステム管理

システム開発を行う技術者や普段マシン運用を生業にしている技術者は、経営レベルでの「システム管理」を考えよという方が難しいかもしれません。しかし、現在、企業の資産の中でコンピュータとその上で稼動しているシステムという資産は、決して軽んじられる存在ではありません。使い方一つで企業に莫大な利益ももたらしますし、また、長期にわたって無駄で多大な費用をつぎ込む元凶にもなります。そのシステムをどう構築し、どう運営していくかは重要な経営戦略の一部になります。
 また、そのシステムが1時間稼動してないだけで膨大な不利益を出すシステムもあります。そのリスク管理は、企業経営者にとって重要なことです。
企業経営者とそれをサポートするシステム運用サービス部門は、システム管理サービスに関するサービスレベルをユーザと取り決め、不測の事態に備えて経営者が判断できるシステムのコンテンジェンシープランを策定していくことが重要です。また、システムの評価及び再評価を定期的に行い、企業にとって最適なプロフィットを享受できるように計画しておくことも重要な管理タスクとなります。

    

■ 関連キーワード

コンテンジェンシープラン

コンテンジェンシープランとは、企業が不測の事態に陥ったときにあらかじめ想定してある事象についてその対応策を計画しておくことです。
システム管理に関連するものだけでなく、万一の際の従業員の動き方、顧客への配慮を含めたリスク管理計画を立てるのが一般的です。2001年9月のテロ事件はまさにこの「不測の事態」に上げられます。
 システム管理の面から見れば、不測の事態が生じた場合のシステムの修復方法・代替装置等を明確に定めた計画書を作成し、さらに具体的な処理手順を示したマニュアル等を作成します。また社内及び顧客に対してプランの開示が必要となります。さらにコンティンジェンシープランに習熟するための障害想定訓練を行うという配慮も必要でしょう。

サービスレベルアグリーメント(SLA)

システム管理サービス部門が、運用サービス範囲とレベルをシステム計画時に、ユーザ(あるいはサービス享受部門)との間で合意書(アグリーメント)を作成し、サービスレベルのサービス内容を明確にすること、またはその合意書のことをさします。
 合意書には、サービス提供の範囲、提供時間のほかに、ヘルプ受付レスポンス時間、故障間隔(MTBF)、平均修理時間(MTTR)などの目標値を取り決めておきます。ユーザは、システム管理サービス部門のサービス内容をこれによって理解し、その達成度を常にウォッチングすることで、システム管理サービスの費用対効果やクオリティを把握できる仕組みを作り出せます。



Next    IT講座トップへ 

TOP > IT講座 > システム管理講座 > 第1回 システム管理への道

システム管理講座